もう二人とも限界にきていたと思う――お前の手紙にそう書いてある。
確かに俺たちは二人ともピリピリしていた。いつも呑気なお前と、それを我慢できない短気な俺。何事にも雑で抜けているお前と、それを叱責する俺。結婚・出産を望んだお前と、煮え切らない俺。
二人が心から楽しく過ごせたのは、もう随分前のことだ。互いに求めているものを与え合うことができず、俺たちは疲弊していった。それでも誤魔化し誤魔化し、自分の気持ちに蓋をして、どうにか日々を過ごしていた。皮肉なことに最後の夜、俺たちはある動画を観て、久々に二人して腹を抱えて笑ったっけ。
今さらになって思うのは、お前の欠点はお前の長所でもあったのだし、何も俺はいちいち目くじらをたててお前を責める必要などなかった。何をするにもスピードが遅い? バッグの中がいつもゴミだらけ? 物入れや棚から取り出したものをそこらへんに放って元に戻さない? すぐに物を壊したり失くしたりする? そんなことがいったい何だというのだろう。全く、どうでもいいことじゃないか。
二人はセックスレスに陥った。主な原因は駄目な自分を嫌悪していた俺にある。気分の落ち込みで、そんな気持ちにはなれなかった。お前の求めに応えないことで自己嫌悪は深まった。最悪なことに俺は、こうなった原因はお前にあると言った。お前の欠点や、お前が俺に対してしてきたことをあげつらい、だからそんな気にはなれないのだと自己防衛のための卑怯な嘘をついた。ますます自己嫌悪が募った。悪循環だった。
お前は努力した。それはもう充分に。俺を苛立たせないよう、短所を克服すべく健気に頑張った。自分に磨きをかけようと、ファッションや化粧などに気を遣った。そうすれば俺の気持ちが動くと信じて。なのに俺は認めなかった。正当に評価しなかった。あまりにも理不尽で、酷い仕打ちをしてしまった。
たらればの話をしても無意味なのは分かってる。それでも今は想像せずにいられない。もし俺がお前に口うるさく言わなければ、セックスレスの原因になった悩みを正直に打ち明けていれば、お前の頑張りを評価して最大限の賛辞を贈っていれば、もっとお前に手放しの愛情を注いでいれば、そして、お前と家庭を作り上げる夢に真剣に対峙していれば、いつからかお前に感じていた、“もうお前の気持ちは俺に向いていないんだろう”という疑念を、俺は抱かずに済んだだろうか。
時間を巻き戻すことができればいいと、本当に思う。
